仔犬の選択

第2章|仔犬の選択

『Wing & Shot』第2章は、「仔犬の選択」について書かれています。

第1章では、立派なシューティング・ドッグとは何か、そして人は犬に何を求めるべきかが語られました。第2章では、その考え方を前提に、実際にどのような仔犬を選ぶべきかという話へ進んでいきます。

この章で Robert G. Wehle が強く述べているのは、仔犬選びは見た目や直感だけで決めるものではないということです。鳥猟犬として将来性のある仔犬を選ぶには、犬種名だけではなく、血統、作出の目的、両親犬の素質、健康状態、性格、そして作出者の姿勢まで見る必要があります。

つまり、仔犬選びとは、かわいい一頭を選ぶ作業ではなく、その犬が将来どのような鳥猟犬になり得るかを見極める作業なのです。

フィールド系の血統を選ぶ

著者はまず、選ぶ仔犬はフィールド系の血統であるべきだと述べています。

これは明確に、KC(FDSB)の血統書を持っていることが重要とされています。
日本では全日本狩猟倶楽部(全猟)です。

同じ犬種であっても、品評会向けに作られてきたショー系と、実際の猟野で働くために作られてきたフィールド系では、作られた目的が全く違います。

ショー系は体型や外貌、犬種標準に沿った美しさを重視します。一方、フィールド系は、鳥を探す能力、走り、風の使い方、ポイント、猟欲、持久力、ハンドラーとの協調性を重視して作られてきた犬です。

鳥猟犬として犬を迎えるなら、見るべきなのは犬種名だけではありません。

その犬が、何のために作られてきた血統なのか。
実際に猟野で働く犬の純粋な流れを持っているのか。
そこを見なければならないということです。

良い血統とは、名前だけではない

血統は重要。

よく知られた優れた系統から仔犬を入手できれば、成功の可能性は高くなります。ただし、ここでいう血統とは、単に有名な名前が並んでいるという意味ではありません。

大切なのは、その血統が長い年月をかけて何を残してきたかです。

鳥を探す犬を出してきたのか。
猟欲のある犬を出してきたのか。
安定した性格の犬を出してきたのか。
実際に猟野で使える犬を生み出してきたのか。

血統は、過去の犬の名前を並べた飾りではありません。その犬が将来どのような資質を持つ可能性があるのかを考えるための手がかりです。

両親犬を見ることの大切さ

仔犬そのものを見ることも大切ですが、父犬や母犬を見ることは、とても重要。

ただし、そのときに注意しなければならないのは、訓練の完成度に惑わされないことです。

よく訓練された犬は、とても立派に見えます。しかし、訓練によって作られた動きは、そのまま遺伝するわけではありません。

仔犬に受け継がれる可能性があるのは、訓練の結果ではなく、犬が本来持っている自然の資質です。

鳥への関心。
猟欲。
走り方。
鼻の使い方。
大胆さ。
精神の安定。
人との関係性。

両親犬を見るときは、「どれだけ完成されているか」ではなく、「どのような素質を持っているか」を何度も通って見る必要があります。

これは現代の日本でもとても大切な視点だと思います。競技会の成績や肩書きだけを見るのではなく、その犬がどのような質の仕事をしているのか、そしてその資質が仔犬に受け継がれる可能性があるのかを見なければなりません。

仔犬の素質を見る

ガンドッグの天賦の素質として、走り、足どり、猟欲、性質、嗅覚能力は大切。

仔犬の段階で完成されたシューティング・ドッグを見ることはできません。まだ幼い犬に、完成犬のような仕事を求めるのは無理があります。

しかし、将来につながる小さな兆しは見ることができます。

戸外に出たとき、どのように動くか。
新しい場所に対して怖がりすぎないか。
鳥や小動物、動くものに興味を示すか。
人の足元だけにまとわりつくのではなく、自分から周囲を探索しようとするか。
走りに活気があるか。
体の使い方が滑らかか。
精神的に安定しているか。

仔犬選びでは、完成度ではなく、将来性を見る必要があります。

近くにいる仔犬が良いとは限らない

初心者は、自分のそばを離れない仔犬に安心しやすいものです。人懐こく、呼べばすぐ来て、足元にいる犬は扱いやすく見えます。

しかし、鳥猟犬として考えるなら、それだけでは足りません。

著者は、主人以外に興味を持たず、目的もなく走る仔犬よりも、小鳥や蝶など、生き物に興味を示す仔犬に目を向けるべきだと述べています。

これはとても重要です。

鳥猟犬は、人の顔色だけを見て歩く犬ではありません。もちろん、ハンドラーとの関係は大切です。しかし同時に、フィールドに出たときには、自分で周囲を感じ取り、風を使い、鳥の気配を探す犬でなければなりません。

人に懐くことと、猟野で働く資質は別のものです。

本当に見たいのは、仔犬の中にある「外の世界へ向かう力」です。

怖がりや神経質さには注意する

仔犬の性格については、今後の長い付き合いにおいて慎重になるべき部分。

憶病さ、神経質さ、精神の不安定さは注意すべき要素です。

鳥猟犬は、野外でさまざまな刺激に出会います。風の音、草の音、人の動き、他の犬、車、馬、銃声、鳥の羽音。そうした刺激に対して、極端に怯える犬では、後の訓練が難しくなります。

もちろん、仔犬には成長の過程があります。幼い時期の一時的な警戒心だけで判断するのは早計です。

しかし、何度か外に出しても、常に強い恐怖や神経質さを示し、改善の兆しがない場合は慎重に考えるべきです。

著者がやや厳しい表現で、素質の乏しい犬は楽しい経験から遠いものになると述べているのも、鳥猟犬の世界では、最初の選択がその後の長い時間に大きく影響します。

走りを見る

仔犬を選ぶときには、できれば野外で走らせてもらうことが大切です。

このとき、完成された猟を期待する必要はありません。見るべきなのは、走りの質です。

活気があるか。
頭を上げているか。
歩様が滑らかか。
体の使い方に無理がないか。
動きに大胆さがあるか。
周囲に興味を持っているか。

著者は、速く、幅広く、円滑で、優雅な歩様を良いものとして見ています。

速さが必要なのは、単に派手に見えるからではありません。速く、効率よく猟野をこなせる犬は、限られた時間の中でより広く鳥を探すことができるからです。

ただし、ここでも大切なのは、速ければよいという話ではありません。走りが仕事に結びついているか。無駄に飛び跳ねているだけではなく、猟野を使う動きにつながるか。そこを見る必要があります。

鳥への反応を見る

この章では、釣竿の先に鳥の翼をつけ、仔犬に見せて反応を見る方法が紹介されています。

翼をひらひらさせ、仔犬が興味を示すか。追おうとするか。捕まえようとするか。そして最終的に、視覚的にポイントするか。

著者は、これは仔犬の遺伝的なポイント能力を見る手助けになると考えています。

ただし、現代の感覚で読むなら、このテストだけで仔犬の将来を決めるのは危険です。仔犬の反応は、その日の環境、体調、月齢、経験によっても変わります。

それでも、「鳥や動くものに対して、どのような関心を示すか」を見るという考え方は、今でも参考になります。

鳥猟犬にとって、鳥への興味は根本です。
そこに反応があるかどうかは、やはり見ておきたいところです。

ポイントスタイルを見る

頭を高く保ち、尾を背線より高く持ち上げ、全身を固く保ち、鳥が飛び立つまで動かない。さらに、頭部は鳥の匂いを取っている方向を向いているべきだとしています。

ここで語られているのは、単なる見た目の美しさだけではありません。

高い姿勢は、草や藪の中でも犬を見つけやすくします。
鼻の向きは、鳥がどこにいるかを人に知らせます。
動かずに保つことは、鳥を不用意に飛ばさないために重要です。

つまり、スタイルとは飾りではなく、実猟の機能と結びついているものなのです。

健康を見る

この章では、股関節形成不全やクル病など、身体的な問題についても触れられています。

現代でも、健康面の確認は非常に重要です。

鳥猟犬は野外で走る犬です。走る、曲がる、止まる、登る、下る。そのすべてに身体の健全さが関わります。

どれほど血統が良くても、どれほど見た目が良くても、身体に大きな問題があれば、長く猟野で働くことは難しくなります。

仔犬を選ぶときには、性格や猟欲だけでなく、身体の健全さを見ることも欠かせません。

作出者を選ぶ

信頼できる作出者から仔犬を求めることはとても大切です。

著者は、有名で認められた作出者から選ぶことを勧めています。理由は単純です。そのような作出者は、血統、健康、飼育環境、犬の将来に対して責任を持っている可能性が高いからです。

良い作出者は、ただ仔犬を売る人ではありません。

どのような犬を残したいのか。
どのような交配をしているのか。
その血統にどのような長所と短所があるのか。
仔犬がどのような環境で育っているのか。
購入後も相談できるか。

そうしたことまで含めて、仔犬選びは作出者選びでもあります。

安いから、近いから、すぐに買えるからという理由だけで選ぶと、あとで大きな時間と労力を失うことがあります。

最初の価格より、その後の時間の方が大きい

犬に支払うトータル費用について。

最初に支払う仔犬の代金は、その犬の一生にかかる費用のごく一部でしかありません。

食事、訓練、犬舎、医療、遠征、時間、労力。
良い犬でも、平凡な犬でも、同じように費用はかかります。

だからこそ、最初の数万円、数十万円だけを惜しんで、将来性の乏しい犬を選ぶことは、結果的には大きな損失になるかもしれません。

もちろん、高い犬なら必ず良いということではありません。

大切なのは、価格ではなく、その犬にどれだけの根拠があるかです。血統、健康、素質、作出者の姿勢。そのすべてを見たうえで、納得して選ぶことが大切なのだと思います。

Training Day の視点で読む

Training Day の視点で読むなら、この第2章は「良い仔犬の選び方」だけではなく、「良い犬を見る目をどう持つか」という章です。

犬種名だけで見ない。
血統名だけで見ない。
成績だけで見ない。
かわいさだけで見ない。
価格だけで見ない。

その犬が、どのような目的で作られ、どのような素質を持ち、どのような環境で育ち、将来どのような鳥猟犬になり得るのか。

そこを見ようとする姿勢が、この章の中心にあるように思います。

仔犬選びは、鳥猟犬との長い時間の入口です。

最初に何を見るか。
何を重視するか。
どこに疑問を持つか。
誰から迎えるか。

その選択が、その後の訓練や猟の楽しさに大きく関わってきます。

第1章で著者は、「まず人間の側が、犬に何をしてもらいたいのかを明確にすること」が訓練の第一歩だと述べました。

第2章は、その考えを受けて、ではその目的に合う仔犬をどう選ぶのかを語っている章です。

立派なシューティング・ドッグは、訓練だけで作られるものではありません。

生まれ持った素質があり、それを見抜く人の目があり、良い作出があり、適切な環境があり、その上に訓練が積み重なっていく。

仔犬を選ぶということは、まだ形になっていない未来の猟犬を選ぶことです。
だからこそ、焦らず、よく見て、よく聞いて、納得して迎えることが大切なのだと思います。

日本で鳥猟犬の仔犬を迎えるということ

日本で良い鳥猟犬の仔犬を迎えるには、血統や素質を見る目だけでなく、人とのつながりも大切になります。

特に全猟系の犬は、一般的なペットショップや通常の流通に乗るものではありません。良い犬ほど、作出者や訓練者、競技会に関わる人たちの間で情報が動くことが多く、ただネットで探しているだけでは出会いにくい面があります。

それは閉鎖的だからというより、フィールドの血統そのものが、人と人との関係の中で守られ、受け継がれてきたものだからです。

フィールドの血統は、交配を重ねることで、より良い鳥猟犬へ改良していくことを目指しています。繁殖は、単に仔犬を増やすことではありません。より良い鼻、より良い走り、より良いスタイル、より良い精神、より良い猟欲を次の世代へ残していくための、鳥猟犬づくりの根幹です。

ですから、仔犬を手に入れるということは、単に一頭の犬を買うということではありません。新しい可能性を手に入れることであり、その仔犬が将来、血統をつなぐ繁殖プログラムの一部になっていく可能性を持つということでもあります。

だからこそ、この世界では「譲渡して終わり」にはなりにくいのです。

作出者は、その仔犬がどのように育つかを見ています。訓練者は、その犬がどのように猟野で伸びていくかを見ています。競技会では、その犬が血統として何を受け継ぎ、何を表現しているのかが見えてきます。そこからまた次の交配が考えられ、次の世代へつながっていきます。

つまり、フィールドの繁殖プログラムは、犬だけで回っているのではありません。人によって回っているのです。

新しく始める人には、むしろ良い犬が渡されることがあります。それは、良い犬でなければ続かないからです。最初から扱いにくい犬や、強すぎる犬、難しい犬を渡してしまえば、その人は鳥猟犬の面白さにたどり着く前に苦労してしまうかもしれません。

一方で、経験のある繁殖者や訓練者は、より難しい犬をあえて手元に残すことがあります。強い個性、強い猟欲、大きな走り、扱いの難しさ。そうした犬の中に、将来の改良につながる資質が含まれていることもあるからです。

このように考えると、良い仔犬との出会いは、単なる売買ではありません。

それは、作出者、訓練者、ハンドラー、競技会、そして血統の流れの中に、自分も少しずつ加わっていくことです。

だからこそ、仔犬を迎えたいと思うなら、まず現場に足を運ぶことが大切です。全猟の猟野競技会や訓練会を見学し、実際に犬を見て、人と話し、自分がどのような犬を求めているのかを伝える。そこで「犬が欲しい」「将来は競技会にも出てみたい」と素直に話せば、道が開けることは少なくありません。

もちろん、仔犬を迎えるということは、ただ犬を持つということではありません。訓練する時間を作ること。犬を猟野に連れて行くこと。必要であれば競技会に出る覚悟を持つこと。そうした準備も含めて、鳥猟犬を迎えるということだと思います。

日本で鳥猟犬を迎える近道は、ネットで仔犬だけを探すことではなく、現場に入り、人に会い、犬を見ることです。

そして、その人間関係は、単なる紹介や入手の手段ではありません。より良い鳥猟犬を次の世代へつないでいくための、大切なプロセスそのものなのだと思います。

仔犬を選ぶということは、まだ形になっていない未来の猟犬を選ぶことです。

そして日本では、その未来は仔犬だけで決まるものではありません。どの人から学び、どの犬を見て、どの現場に身を置くかによっても大きく変わります。

フィールドの血統は、犬だけで受け継がれるものではありません。人が見て、人が選び、人が走らせ、人が次の世代へつないでいくものです。

だからこそ、焦らず、よく見て、よく聞いて、現場に足を運ぶこと。

良い仔犬との出会いは、良い人との出会いから始まるのです。


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