ポインティングドッグを迎えたい人へ
——ショー系とフィールド系の違いを、最初に一発で整理する
ポインティングドッグを迎えたい。
そして、いつかは鳥猟(実猟)にも挑戦したい。できればFT(フィールドトライアル)にも興味がある。
――この気持ちは、鳥猟犬に憧れた人の「いちばん自然な入口」だと思います。
ただし、初心者が最初に押さえておかなければならないポイントがあります。
- 「同じ犬種なのに、ショー系とフィールド系って何が違うのですか?」
- 「どっちの仔犬を選べば、実猟やFTで遊べる犬になりやすいのですか?」
この記事では、ここを整理します。
結論から言うと、今後実猟やトライアルにチャレンジしたいなら、FDSB(基本的には米国最古の猟犬専門の血統登録機関である Field Dog Stud Book)の血統書か、全日本狩猟倶楽部の血統書を持つ血統=フィールド系をおすすめします。
なぜそう言えるのか、順番に説明していきます。
私の失敗談:最初のポインターは「ショー系」でした
指示犬(ポインティングドッグ)を始めようと考える初心者の頃は、右も左も分からないものです。
ですので最初に、25年前の私の失敗談を紹介します。
私は静岡に住んでおり、鳥猟が身近な地域で暮らしています。友人が犬を使った鳥猟をしていたこともあり、仕事の状況が落ち着いてきたタイミングで「次の犬はポインティングドッグにしよう」と決めました。猟銃の所持許可と狩猟免許の取得準備を進めながら、西富士で行われているポインティングドッグの大会も春秋に見学していました。
その際、審査員の方に直接お話を伺う機会があり、
- 実猟で使うには英系が合いやすいこと
- 全猟登録犬は初心者が始める入口として分かりやすいこと
- 訓練が分からないうちは、走りすぎる犬は避けた方が良いこと
などを教えていただきました。
そこで私は、英系で全猟登録犬を作っている犬舎を紹介してもらい、最初のポインターを迎えました。
条件は揃っているはずでした。ところが、その犬はいつまで経っても猟欲が出ず、鳥に対するスイッチが入りませんでした。現場で「仕事」が始まらないのです。
不思議に思って血統書を改めて確認すると、ショー系のチャンピオン犬の血統が中心でした。その犬舎は、米系はトライアルに使っている一方で、英系は輸入したショー系を交配していたようです。この繁殖者は、フィールド系とショー系がごっちゃになってる事故物件。
「実猟に使える個体が出るのがほとんど」と説明されていましたが、私の犬のように猟欲がほぼ出ない個体が出るのも現実でした。
この経験で痛感したのは、「英系」「全猟登録」といった看板だけでは中身までは保証されないということです。僕が英系で実猟をやりたいと言ったので、繁殖者の勘違いもあったのかも知れません。
実猟やトライアルを見据えるなら、最終的には
- 血統書(ライン)
- 犬舎の繁殖目的
- フィールドトライアルに出場し第3者が審査した事実
を見なければならないのだと学びました。
まず最初に:犬種より先に「血統(ライン)」の話をしなければならない
初心者のうちは、どうしても犬種名から入ってしまいます。
- イングリッシュセターが好き
- ポインターに憧れている
- GSPがかっこいい
- ブリタニーがちょうど良さそう
もちろん犬種は大切です。その特性を把握しているのなら同時に進めても良いです。
ですが、ポインティングドッグの世界では、犬種以上に**血統(ライン)**が犬の中身を決めます。
血統(ライン)とは何ですか?
難しく聞こえますが、意味はシンプルです。
血統とは、その犬が「何を目的に」何世代も選ばれてきたかの履歴です。
- 親犬はどんな能力を評価されて繁殖に残ったのか
- 祖父母は何が強くて残ったのか
- 犬舎はどんな犬を作りたいのか
この積み重ねが、仔犬の「素材」を作ります。
訓練で作れるもの/作りにくいものがある
訓練で整えやすいもの(後から形にしやすいもの)もあれば、血統の影響が強く、後から作りにくいものもあります。
訓練で作れる(後から整えやすい)
- 基礎コマンドの理解(呼び戻しなど)
血統の影響が強い(後から作りにくい)
- 猟欲(鳥を探しに行くエンジン)
- インテリジェンス(理解の速さや判断の質)
- スタミナ(体構・心肺の土台)
- 基礎的な猟能や快活さ
- 訓練性能
実猟やトライアルで差が出やすいのは、ほぼ後者です。
だからこそ、最初に血統(ライン)の話をしなければならないのです。
まず前提:同じ犬種でも“改良の目的”が違う
ポインティングドッグの世界でよく言われる
- ショー系(コンフォメーション)
- フィールド系(猟・フィールドトライアル)
この2つは、犬の良し悪しではなく、**「何を最優先に改良してきたか」**が違います。
同じ犬種名でも、目的が違えば犬の傾向も変わります。
これを理解すると、仔犬選びの失敗は減ります。
ショー系とフィールド系の違い(結論)
ショー系:外貌(スタンダード)重視
ショー系の繁殖目的は、ざっくり言えばこうです。
- 目的:犬種標準(スタンダード)に最も近い理想像を作ること
- 選抜軸:骨格・被毛・バランス・歩様・気質など、外貌と健全性が中心
結果として起きやすい傾向は次の通りです。
- 見栄え(頭部表現・被毛・シルエット)が強いラインが出やすい
- ただし近年の審査は、過度な誇張を嫌い、健康・健全性(サウンドネス)も重視される流れ
ここで誤解されがちなのは、「ショー=見た目だけ」ではないという点です。
実際には、健全性や動きも評価の柱に入っています。
ただし重要なのは、現場で鳥を探して仕事をする能力そのものを、ショーの場で直接審査するわけではないという点です。
フィールド系:作業能力(機能)重視
フィールド系は、目的がはっきりしています。
- 目的:鳥猟・競技で成立する能力を高めること
(探索力/鼻/スタミナ/ハンドリングのしやすさ/メンタル) - 選抜軸:結果
(鳥、レンジ、風の読み、集中、従順性、力強いポイント、持来など)
→つまり「現場で使えるか」に集約され、競技としての選抜基準がある世界です。
フィールドでは、体構やスタイルも軽視されません。
ただしそれは飾りではなく、
- 容量の大きい広い胸
- 軽い体重・最適な足の角度バランス
- 背線の整った効率の良い歩様・機敏さ
- 尾の力強さ
といった、鳥を捜索し、走り、成立させるための実用的な形として語られます。
結果として起きやすい傾向は次の通りです。
- 走り(運動性能)・心肺・筋肉・回復力
- 訓練性能・判断の質(インテリジェンス)
こうした厳しく選択された要素が強いラインが出やすい。
では「ショー」は何を基準に審査しているのですか?
1)審査の土台は「犬種標準(スタンダード)」
ドッグショーは、犬を“かわいい順”に並べる場ではありません。
犬種ごとに定められた標準にどれだけ近いかを評価します。
外貌、骨格、筋肉、被毛、歩き方などをスタンダードと照らして判断します。
2)JKCが示す「6つの審査ポイント」
JKCは審査の見どころとして、次の6点を挙げています。
- タイプ(その犬種らしさ)
- クオリティー(犬質の充実度・洗練)
- サウンドネス(精神的・肉体的な健全性)
- バランス(全体の調和)
- コンディション(健康状態・精神状態・仕上がり)
- キャラクター(魅力・マナー)
ショーでも「健全性(サウンドネス)」が明確に評価軸に入っています。
3)審査の流れ(何をされるのですか?)
- 個体審査:立たせて観察し、触診で骨格や歯並び、毛質などを確認。さらに歩かせて動き(歩様)を見ます
- 比較審査:同じクラスの中で、よりスタンダードに近い犬を選びます
ここから本題:初心者はどんな仔犬を迎えるべきか?
実猟・トライアルをやりたいなら、フィールド系を推す理由
「鳥猟やトライアルに挑戦したい」なら、仔犬の時点でフィールド系を選ぶのが最短です。
理由はシンプルで、繁殖の方向性が違うからです。
- フィールド系は、鳥猟犬としての基礎能力を豊富に備えている。
- 鳥猟犬の性能は、血統が占める割合が大部分。
- 初心者ほど、この土台に助けられやすい
ショー系を勧めにくい理由(否定ではなく「目的の違い」)
ショー系は、繁殖の評価軸が「スタンダードへの適合(外貌と気質、健全性)」に置かれやすいです。
そのため、鳥猟やトライアルで必要になる「結果に直結する能力」が最優先で残るとは限りません。
つまり、
- ショー系が悪いのではありません
- ただし、あなたがやりたいこと(実猟・トライアル)に対して、最短距離になりにくい場合があります
という話です。
重要:最終的に、仔犬選びは犬舎選びになります
ここまで読んでいただくと分かると思いますが、
仔犬を眺めて「当たり」を引くゲームではありません。
最終的には、犬舎がどんな目的で、どんな犬を作ってきたかが大きく影響します。
だからこそ、仔犬選びは犬舎選びになります。
まとめ:実猟やトライアルを目指すなら、最初からフィールド系でいい
初心者が最初に押さえるべきなのは、次の3つです。
- 同じ犬種でも、ショー系とフィールド系は改良の目的が違うこと
- 実猟やトライアルに挑戦したいなら、フィールド系が近道になるそして簡単。
- 最終的に仔犬選びは犬舎選びになること
その一歩は「犬種」より「ライン」と「犬舎」から始まります。
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