第4章|初期のヤード訓練

『Wing & Shot』多くの翻訳本では、第4章は「初期の家庭訓練」と書かれてますが、ここで論じられているのはヤード訓練です。

第3章では、仔犬を迎えた最初の時期に、安心させ、名前を覚えさせ、車に慣らし、野外で走らせ、鳥への興味を育てていくことが語られました。

そして第4章では、いよいよヤード訓練として、いくつかの命令語を教えていく段階に入ります。

ここで大切なのは、訓練を急がないことです。

著者は、犬がすでに家に慣れ、車に乗ることを覚え、名前を知り、狩りに熱心になり、フラッシュポイントを経験し、優しい言葉や笛の二吹きの意味を理解している状態を前提にしています。

つまり、ヤード訓練は、仔犬を迎えてすぐに力で教え込むものではありません。
訓練に入る前にはいくつか準備の段階があることを覚えておいて下さい。

犬が人を信頼し、外の世界を楽しみ、猟への興味を持ち始めたあとで、少しずつ言葉の意味を教えていくものです。
理解のキーワードは、猟欲そして信頼関係が一定のレベルにあること。そして一貫性です。

訓練は、犬が準備できてから始める

「シューティング・ドッグを訓練するには、いつ頃が一番よいのか」

これは、多くの人が考える問題です。

早く教えた方がよいのか。
しばらく自由にさせた方がよいのか。
どこから本格的な訓練に入るべきなのか。

積極的な訓練は、ちょうどよい時期に行わなければならないと述べています。

ここでいう訓練とは、ただ名前を覚えさせたり、楽しい声をかけたりする段階ではありません。鳥が飛び立ったとき、銃声がしたとき、それでも犬がポイント位置に留まるようにするための、より本格的な訓練を指しています。

しかし、この第4章の段階では、犬はまだそこまで到達していません。

今の犬に必要なのは、いきなり完成犬の作法を求めることではなく、これからの訓練の土台になる言葉を、ヤード訓練の中で少しずつ理解させることです。

この章では、「ノー」「ウォー」「カムイン」「ステイ」「オーライ」といった言葉が出てきます。

これらは、犬を支配するための言葉ではありません。
人と犬が、これから一緒に猟野で仕事をするための約束です。

「ノー」を教える意味

最初に教える重要な言葉は「ノー」です。

「ノー」とは、犬が今していることをやめるべきだと伝える言葉です。

ただし、これは人間にとっては簡単に聞こえても、犬にとっては非常に難しい言葉です。

なぜなら、「ノー」は特定の一つの動作だけを指す言葉ではないからです。

敷物を噛む。
食べ物に勝手に口を出す。
してはいけない物に近づく。
人が望まない行動を続ける。

そうしたさまざまな場面で、「今していることをやめなさい」という意味を持ちます。

犬にとっては、状況ごとに違う行動を、同じ一つの言葉で止められるわけです。だからこそ、「ノー」は簡単な言葉ではありません。

この言葉を教えるときに大切なのは、優しさと断固とした態度の両方です。

犬に恐怖を与える必要はありません。
しかし、曖昧にしてよい言葉でもありません。

「ノー」と言ったら、それは必ず「やめる」という意味でなければなりません。

優しく、しかし一貫して教える

著者は、「ノー」を教えるときにも、優しい訓練でなければならないと述べています。

これは、犬に主人への愛情と、猟への愛情を保たせるためです。

鳥猟犬にとって、これはとても大切なことです。

訓練によって犬が人を恐れるようになってしまえば、犬は猟に集中できません。
叱られることばかり気にする犬になれば、自分で猟野を使い、鳥を探す気持ちが弱くなってしまいます。

本来、鳥猟犬は前方に出て、仕事に打ち込む犬でなければなりません。

一度放たれたならば、犬は主人の顔色ばかり見るのではなく、風を使い、地形を読み、鳥を探すことに集中するべきです。

ところが、訓練の時期や方法を間違えると、犬は常に振り返る犬になってしまいます。

自分のしていることが叱られないか。
主人の機嫌は悪くないか。
これ以上前に出てもよいのか。
戻った方が安全なのか。

そういうことばかり気にする犬は、猟野で本当の力を出しにくくなります。

だからこそ、家庭訓練は優しく、しかし一貫して行う必要があります。

甘やかすことと、優しく教えることは違います。
怒ることと、断固として教えることも違います。

犬が混乱しないように、短く、分かりやすく、同じ意味で伝えることが大切です。

気短な訓練者が犬を壊してしまう

特に重要なのは、訓練を急ぎすぎることへの警告です。

著者は、訓練の準備ができていない犬に対して、気短な訓練者が早くから強い訓練を始めてしまうことで、犬を台無しにしてしまうことがあります。

これは現代にもそのまま当てはまる話だと思います。

若犬は、まだ心も体も発達の途中です。
鳥への興味も育っている途中です。
人への信頼も作られている途中です。

その段階で、結果だけを急いでしまうと、犬は猟を楽しむ前に、人間の顔色を見るようになってしまいます。

本来であれば、鳥を探すことに夢中になるべき犬が、いつも主人を見て、怒られないかを気にしてしまう。

これは鳥猟犬としては大きな損失です。

犬が大胆であり、猟に熱心であり、人を信頼していること。
その土台ができてから、ヤード訓練に入るべきなのです。

訓練とは、犬を小さくまとめるためのものではありません。

犬の良さを壊さずに、人と一緒に仕事ができる形へ整えていくものです。

レッスンは短く、楽しく終わる

家庭訓練のレッスンは、短く、興味深いものにしなければなりません。

著者は、若犬にとっては15分から20分ほどで十分です。

長くやればよいというものではありません。

犬が飽きる。
集中が切れる。
嫌になってくる。
人間も焦ってくる。

そうなると、訓練は楽しいものではなくなります。

レッスンを始めたら、人間の態度や声で、今は遊びではなく訓練の時間だと犬に伝えます。
そして、終わるときには、犬が分かるように終わりを示します。

優しい言葉をかける。
褒める。
少し遊ばせる。
解放してやる。

そうすることで、犬は訓練を嫌な時間ではなく、人と一緒に何かをする時間として受け入れやすくなります。

大切なのは、良い気分で終わることです。

終わり際に叱られて終わる。
失敗したまま終わる。
疲れ切って終わる。

これでは、次の訓練に向かう気持ちが悪くなります。

短く、集中して、よくできたところで終わる。
犬にとってはまだやりたい。少し物足りない。このぐらいで終わるのが理想です。

これは家庭訓練だけでなく、鳥猟犬の訓練全体に通じる大切な考え方です。

レッスン前に少し走らせる

この章では、ヤード訓練の前に、犬の余った精力を少し抜いておくことにも触れられています。

若犬はエネルギーが余っています。

その状態で、いきなりじっとさせたり、細かいことを教えようとしても、うまくいかないことがあります。

少し猟野で走らせる。
外で体を動かす。
気持ちを落ち着かせる。

その後にヤード訓練に入ると、犬は扱いやすくなります。

これはとても現実的な考え方です。

落ち着きがない犬を、力で抑え込むのではなく、まず体を動かす。
余分な興奮を抜いてから、短いレッスンに入る。

若犬にとっても、人間にとっても、その方が無理がありません。

一貫性が犬を混乱させない

ヤード訓練で最も大切なものの一つが、一貫性です。

この一貫性の大切さは全てにおいて有効です。

たとえば、敷物を噛むことを考えてみます。

月曜日には叱る。
火曜日には許す。
水曜日にはまた叱る。

これでは、犬は何が正しいのか分かりません。

人間の気分で許されたり、叱られたりすれば、犬は命令の意味ではなく、人間の機嫌を読むようになります。

「ノー」と言われたら、どの場面でもやめる。
「ウォー」と言われたら、どの場面でも止まる。
「カムイン」と言われたら、どの場面でも戻る。

命令語は、いつも同じ意味でなければなりません。

もちろん、若犬は一度で完璧に理解するわけではありません。だからこそ、反復が必要です。

ただし、人間の側が意味を変えてはいけないのです。

犬に一貫性を求めるなら、まず人間の側が一貫していなければなりません。

命令は少なく、確実に使う

この章で非常に大切なのが、命令を節約して使うという考え方です。

犬が命令の意味を覚えたなら、その命令は必要なときだけ使う。
しかし、一度使ったなら、必ず従わせる。

これが基本です。

命令を乱用すると、言葉の価値が下がります。

「カムイン」と何度も呼ぶ。
戻らないのにまた呼ぶ。
さらに大きな声で呼ぶ。
最後には長い言葉で怒鳴る。

こうなると、犬は「一回目の命令は聞かなくてもよい」と覚えてしまいます。

さらに、人間が怒って大声になれば、犬が理解するのは言葉の意味ではなく、主人が怒っているという雰囲気だけです。

これでは訓練になりません。

命令は、一回で伝える。
犬が従える状況で使う。
必要以上に大声を出さない。
従わせる準備ができていないなら、むやみに命令しない。

これはとても大切です。

命令は、人間の焦りをぶつけるためのものではありません。

犬に分かるように、必要な場面で、確実に使うものです。

呼び戻しは、犬が戻れる状況で使う

著者は、命令を出すタイミングについて、猟野での例を挙げています。

犬が生垣の列を狩っていて、その先に目的となる草むらがある。犬はそこへ向かって仕事をしている。その途中で「カムイン」と呼ぶ。

しかし、犬の中では、そこを最後まで狩りたいという気持ちが強い。

もし犬がそのまま目的地まで狩ってしまえば、鳥を探す犬としては自然な行動をしたことになります。けれども、命令には従わなかったことになります。

ここに難しさがあります。

犬が聞けない状況で命令を出してしまうと、不服従を作ってしまうのです。

だからこそ、命令を出す前に、人間の側が状況を判断しなければなりません。

今この犬は戻れる状態なのか。
呼ぶべき場面なのか。
もう少し仕事を終えさせてから呼ぶべきなのか。

命令を使う前に、犬の状態と状況を見る必要があります。

これは、鳥猟犬の訓練ではとても重要な考え方です。

犬が悪いのではなく、人間が命令を出すタイミングを間違えている場合も多いにあるからです。

怒鳴らない、感情で訓練しない

犬に向かって大声で怒鳴ることへの警告。

犬が命令に従わない。
人間が大きな声でもう一度言う。
それでも従わない。
さらに怒鳴る。
最後には長い言葉で叱り続ける。

これは、犬にとって非常に分かりにくい状態です。

犬は、人間の長い言葉を理解しているわけではありません。
犬に伝わるのは、声の高さ、強さ、雰囲気、怒りです。

人間が感情的になるほど、犬は命令の意味を理解しにくくなります。

もし自分が気短になっていると感じたら、その日は訓練をやめた方がよい。

著者はそのように述べています。

これはとても大切なことです。

若犬は、たった一度の強い怒りで大きく崩れることがあります。

だからこそ、忍耐と自己制御は、訓練の最初から最後まで必要なのです。

犬を訓練しているようで、実は人間の側も訓練されているのだと思います。

復習してから、新しいことを教える

ヤード訓練では、新しい命令を教える前に、すでに覚えたことを復習することが勧められています。

これは、犬に思い出させるためだけではありません。

犬を訓練の気分に入れるためでもあります。

名前を呼ぶ。
「ノー」を確認する。
「ウォー」を確認する。
できたら褒める。

そうしてから新しい言葉に入ると、犬は「今は人と一緒に学ぶ時間だ」と分かりやすくなります。

また、復習は人間のためにも大切です。

犬が本当に理解しているのか。
前回より良くなっているのか。
まだ曖昧なのか。
どこで迷っているのか。

それを確認しながら進めることができます。

訓練は、一度教えたら終わりではありません。
何度も繰り返し、少しずつ確実にしていくものです。

「ウォー」は止まることを教える言葉

「ノー」を理解した次に、「ウォー」を教えます。

「ウォー」は、犬がどこにいても、次の指示があるまでその場で止まっていることを意味します。

これは、鳥猟犬にとって非常に重要な命令です。

鳥を扱う訓練にも関わりますし、犬の作法を整えるためにも大切です。

教え方は、最初は簡単なところから始めます。

犬を立ち止まらせる。
人が数歩離れる。
犬が動こうとしたら元の位置に戻す。
少しでも留まれたら、優しく褒める。

ここで大切なのは、座らせたり伏せさせたりすることではありません。

「ウォー」は、立ったまま止まることです。

鳥猟犬にとって、立ったまま止まることには意味があります。

後のポイントやスタンチネスにもつながっていくからです。

うまくいかない場合は、長めの綱を使い、犬が前へ来られないようにしながら、その場に留まることを教えていきます。

犬が動いたら、元の位置に戻す。
できたら褒める。
少しずつ距離と時間を伸ばす。

焦らず、短く、確実に進めることが大切です。

「カムイン」は必ず戻ることを教える言葉

次に教えるのが「カムイン」です。

犬はすでに、自分の名前を呼ばれれば手元に来るかもしれません。しかし、それは自由意思で来ているだけです。

ここで教えたいのは、どのような状況でも、たとえ気分が乗らないときでも、命令されたら手元に来るということです。

これは鳥猟犬にとって非常に重要です。

戻るべきときに戻れること。
呼ばれたら確実に来ること。
必要な場面で犬を回収できること。

この土台がなければ、野外で安心して犬を使うことはできません。

著者は、チェックコードを使って「カムイン」を教える方法を述べています。

チェックコードは、長い引き綱です。犬に自由を与えながらも、必要なときには確実に手元へ導くことができます。

犬が5mから7mほど離れたところで「カムイン」と命じ、同時にチェックコードで手元へ導く。
来たら、決して怒らず、優しく褒める。

これを繰り返します。

ここで重要なのは、犬を呼んでから叱らないことです。

犬が戻ってきたときに嫌なことが起きれば、犬は戻ることを嫌がるようになります。

戻ったら、良いことがある。
戻ったら、安心できる。
戻ったら、褒められる。

その経験を積ませることが大切です。

そして、犬が命令を確実に理解したと感じたら、少しずつ確実性を高めていきます。

ただし、すぐにチェックコードを外してしまうのではなく、失敗しそうな段階ではまた戻る。
できるようになったら外す。
失敗したら戻る。

この繰り返しが、確実な呼び戻しにつながっていきます。

「ステイ」と「オーライ」で始まりと終わりを教える

この章では、「ステイ」と「オーライ」も出てきます。

「ステイ」は、命令された場所にきちんと留まることを意味します。

「ウォー」が立ったまま止まることだとすれば、「ステイ」は、その場に留まり続けることを教える言葉です。

そして「オーライ」は、その命令を解いてもよいという合図です。

これは非常に大切です。

犬に命令を教えるとき、その命令を始める言葉だけでなく、終わらせる言葉も必要です。

いつまで止まればよいのか。
いつ動いてよいのか。
誰が解除するのか。

これが曖昧だと、犬は自分の判断で動くようになります。

「ウォー」と言われたら止まる。
「ステイ」と言われたら留まる。
「オーライ」と言われたら動いてよい。

このように、始まりと終わりを明確にすることで、犬は安心して命令に従うことができます。

言葉を増やしすぎない

この段階でたくさんの言葉を使いすぎないよう注意が必要です。

犬は、人間のように多くの言葉を整理して理解するわけではありません。

短い期間に多くの命令を入れすぎると、犬は混乱します。

一つの言葉を覚える。
確実に理解する。
それを復習する。
次の言葉へ進む。

この順序が大切です。

この章の最後では、犬が知っている言葉として、次の七つが整理されています。

名前。
グッド・ボーイ。
ノー。
ウォー。
カムイン。
ステイ。
オーライ。

言葉の数は多くありません。

しかし、それぞれの言葉の意味が犬にしっかり入っていれば、それだけでヤード訓練の土台としては大きな力になります。

大切なのは、言葉の数ではありません。
犬がその言葉を、どれだけ確実に理解しているかです。

ヤード訓練は、犬との約束を作る時間

この章を読むと、ヤード訓練とは単なるしつけではないことが分かります。

「ノー」は、してはいけないことを伝える約束です。
「ウォー」は、止まる約束です。
「カムイン」は、戻る約束です。
「ステイ」は、留まる約束です。
「オーライ」は、動いてよいという約束です。

これらは、すべて人と犬が一緒に暮らし、やがて猟野で安全に仕事をするための共通語です。

命令語は、犬を押さえつけるためのものではありません。
人と犬が、同じ意味を共有するためのものです。

だからこそ、言葉は少なくてよいのです。

少ない言葉を、いつも同じ意味で使う。これが一貫性
犬が理解できる状況で使う。
一度出したら、曖昧にしない。
できたら、必ず認める。

この積み重ねが、犬との信頼を作っていきます。

Training Day の視点で読む

Training Day の視点で読むなら、第4章は「命令語の教え方」の章であると同時に、人間の側の姿勢を整える章でもあります。

犬の訓練は一緒に生活する飼い主の訓練であり、ハンドラーの訓練です。

犬に何を教えるか。
どの順序で教えるか。
どのタイミングで命令するか。
どこで褒めるか。
どこでやめるか。
どこで我慢するか。

これらはすべて、人間の判断です。

犬が混乱する原因は、犬の側だけにあるわけではありません。
人間の言葉が多すぎる。
命令の意味が毎回違う。
できない状況で命令してしまう。
感情的に怒鳴ってしまう。
終わり方が悪い。

そうした人間側の乱れが、犬の混乱を作ることがほとんどです。

鳥猟犬の訓練で大切なのは、犬を従わせることだけではありません。

犬が理解できるように、人間が整えることです。

短い言葉。
一貫した態度。
良い終わり方。
焦らない心。
必要なときだけ命令する判断力。

こうしたものが、ヤード訓練の土台になります。

第4章は、いよいよ命令語が出てくる章ですが、本当に教えているのは、命令そのものではなく、犬と人が同じ約束を持つことなのです。

この約束が家庭で作られているからこそ、やがて猟野に出たとき、犬は自由に走りながらも、人とつながって仕事ができるようになっていくのです。

私の補足

この章で翻訳される「家庭訓練」は、現代の日本では「ヤード訓練」と呼んだ方が実感に近いと思います。

家の中で行うしつけというより、庭先や犬舎まわりなど、犬が落ち着いて人の指示を受けられる場所で行う基礎訓練です。
猟野に出る前に、犬と人との間で最低限の約束事を作る段階と言ってよいでしょう。

特に大切なのは、ポインティングドッグにとって「待たせる訓練」と「立って止める訓練」は、意味が違うということです。
あえて、「ウォー」と「ステイ」を分けて説明しているところが重要です。

一般的な家庭犬のしつけでは、「座れ」や「伏せ」が基本になることが多いと思います。
しかし、ポインティングドッグにとって重要なのは、鳥の前で立ったまま止まることです。

そのため、この章で出てくる「ウォー」は、単に止まれという命令ではなく、後に鳥の前で不動になるための大切な基礎になります。
ここを座らせる方向で教えてしまうと、ポインティングドッグとして求められる姿とは違うものになってしまいます。

また、命令を増やしすぎないことも重要です。

犬に多くの言葉を一度に教えようとすると、犬は混乱します。
さらに、命令で細かく縛りすぎると、犬の動きや判断が小さくなってしまいます。

猟野で必要なのは、主人の顔色を見続ける犬ではありません。
鳥を探すことに集中し、自分の鼻と経験で前へ出ていく犬です。

猟欲が十分に育つ前に強く叱ると、犬は鳥よりも主人を気にするようになります。
これは実猟犬、フィールド・トライアル犬のどちらにとっても望ましい姿ではありません。

だからこそ、訓練は怒鳴って従わせるものではなく、静かに、確実に、同じ意味で教え続けることが大切です。

犬が失敗した時には、ただ叱るのではなく、前の段階に戻る。
チェックコードに戻す。
距離を短くする。
時間を短くする。
犬が成功できる条件まで戻して、もう一度やり直す。

この考え方は、今でもとても重要だと思います。

若犬を小さくせず、猟欲を壊さず、しかし必要な命令には確実に従わせる。
そのための最初の基礎が、この章で述べられている初期のヤード訓練です。


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